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アルルの男・ヒロシです。
少し前にも書きましたが、村上春樹と村上龍の区別が、今月になってようやく付くようになりました。
私にとっては、春樹も龍もどっちでもいい話だ。一般の人にとって、イブリン・ロスチャイルドと、ルネ・ダヴィッド・ロスチャイルドの違いがどうでもいいのと同じである。
しかし、村上春樹の新作『1Q84』(新潮社)は、きわめて謀略的な小説である。タイトルが「1984」なのに、実際のメッセージは「もはやビッグブラザーの出る幕でない」というものである。私はタイトルに惹かれて、「どれ、有名作家の村上春樹でも読んでみるか」と発売日に買った。それで読んでみたのだが、内容はくだらない全共闘世代のノスタルジーがぶちまけられているファンタジー小説。新聞等であらすじも紹介されているので書くが、この小説のテーマはどうもはっきりしない。2時間ほどで読んで、知り合いにあげてしまった。
反権力運動を続けてきた新左翼活動の闘士が、宗教団体(ヤマギシとオウムの混ざったような)の教祖になる。
殺し屋の青豆という女性が一人の主役。もうひとりは予備校の数学教師で、かつては小説家志望だった天吾という男性。この二人は子供の頃、同級生で一度だけ握手をしただけの関係だが、なぜか惹かれ合っているという設定。
天吾は、知り合いの編集者から、女子高生の書いた小説のリライトを依頼される。この少女は一種の失語症だが、霊感にあふれており、ヤマギシ会のような宗教団体「さきがけ」の教祖の娘という設定。
天吾は、知り合いの編集者の提案に載せられて、この美少女“ふかえり”が書いた、小説「空気さなぎ」をリライトしていく。
舞台は1984年で、情景描写が古かったり、CDではなくレコードが登場する。小説では、しばしば、ヤナーチェクの管弦楽曲「シンフォニエッタ」が登場する。HMVなどのレコード店では、このシンフォニエッタのCDが売れているそうだ。こういう時にブルックナーは絶対に登場しない。
問題は、ジョージ・オーウェルの「1984」が、ソ連を始めとする全体主義国家の恐ろしさを描いたものであるのに対して、この「1Q84」はただのファンタジー小説になってしまっている点だ。
知り合いに言わせれば、「村上に深い思想性を求めるのは間違っている。読む方が悪い。小説を読もうと思っているなら、それくらい知っていなければ駄目だ」ということになるらしいが・・・・。
この小説では、冒頭で首都高の非常階段を下りた女主人公の青豆が、別の世界に迷い込む。だから、青豆が前にいた日本とは別の日本に迷い込むという「パラレル・ワールド」の設定である。別の世界は前の世界と似ているが、まったく同じではなく、前の世界で起こっていなかったことも起きている。
こういう「パラレル・ワールド」の描き方が実にチープで情けない。オーウェルの小説では、新聞に載せられる歴史は、常に情報省の役人によって書き換えられている、という描かれ方である。
そして、上巻の半ばくらいで、「もはやビッグブラザーの出る幕ではない」というせりふが登場する。それに変わって登場するのが、「リトル・ピープル」という霊的存在である。
「ジョージ・オーウェルは『1984年』の中に、君もご存知のとおり、ビッグ・ブラザーという独裁者を登場させた。もちろんスターリニズムを寓話化したものだ。〔中略〕しかしこの現実の1984年にあっては、ビッグ・ブラザーはあまりにも有名になり、あまりにも見え透いた存在になってしまった。もしここにビッグ・ブラザーが現れたなら、我々はその人物を指さしてこう言うだろう、『気をつけろ。あいつはビッグ・ブラザーだ!』と。言い換えるなら、この現実の世界にもうビッグ・ブラザーの出る幕はないんだよ。そのかわりに、このリトル・ピープルなるものが登場してきた。なかなか興味深い言葉の対比だとは思わないか?」
(文章出典:http://robart-robarts.blogspot.com/2009/05/q.html)
何を言うか、である。なあ、村上よ、ビッグブラザーは今も現に存在するではないか。宗教やスピリチュアルのような「リトル・ピープル」でごまかすんじゃない。
ビッグブラザーを論じる側にも、スピリチュアルやアセンションの業界から浸食が始まっている。これはキケンな兆候だ。
私は、こういうファンタジー小説が大嫌いである。だから、村上春樹の小説を読むことはもうないだろう。
しかし、こういったファンタジー小説は需要がある。100万部突破したのだから、経済法則的には立派に成功している。それは認めるべきだ。
それは、現代社会で、大量に精神安定剤が求められているのと同じである。オーウェルと並ぶ大小説家のオルダス・ハクスリーは、「すばらしい新世界」という本を書いた。この中には、呑むだけで気分がすっとする「ソーマ」という魅力的なクスリが出てくる。けだし、村上小説は、「活字によるソーマ」なのではあるまいか。
ビッグブラザーは今も存在している。グーグルのストリートビューなどを見ればそんなことはすぐに分かることだ。2chにもビッグブラザーの一派が紛れ込んで、「掲示板監視」を行っているではないか。
村上春樹の小説はその事実を覆い隠そうとしている。警戒せられよ。
村上春樹は米プリンストン大学で博士号を授与されている。欧米学会は、動物学的、博物学的にいえば、「東洋の土人小説家」をひとり、プロファイリングしたわけである。
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